ティファールの電気ケトルを使っていたら、カラカラという音が・・・。

振ってみると、底からポロリと部品が出てきた。
え”ー、波座金(ウエーブワッシャー)とナット・・・(汗)

可動部品が内蔵されているわけでもないのに、ナットがゆるんで脱落するとは・・・しかも緩み止めのための波座金まで噛ませてあるのに!
このケトル、0.8リットルと小容量なのだが、ガスで沸かすよりもはるかに早く沸くので重宝していたのだ。(内装がプラスチックなのが私のポリシーに反するのだけれど。)
しかし、当然ながら高熱を発する構造であるから、部品がゆるんで外れたままで使い続けるのはさすがに躊躇するところ。
修理してみようと底を見たら・・・

あらら、ネジの1本が「特殊ネジ」になっています。

大抵の家庭にあるプラス、マイナスのドライバーでは緩められない、「雪印型」のネジ。これは普通の六角レンチでも開けられないもので、「トルクスねじ」と言われるもの。(「ヘクサロビュラ」とか「ヘクスローブ」とも言われるようだが、厳密な相違は不勉強にして知らない。)
こういう特殊なネジが使われるのは、高熱を発する部品など素人が開けると事故や故障に繋がる場合があるので、修理は専門家にまかせてほしい、という場合だ。(ネジ山のつぶれを防ぐ目的の場合もある。)
しかし、このケトルの場合、修理といってもへたすりゃ買い直した方が安上がりという線が濃厚だ。なので、ま、だめもとでトルクスねじ用のレンチを近所のホームセンターで買ってきた。398円なりの安物だ。

このねじ、一見、見慣れないねじだが、実はどこの家庭でも身近にある。ひとつはパソコンのハードディスク。精密部品なのでたいていはこのトルクスねじが使われているかと思う。

もう一つはガスのメーターボックス。

こちらはよく見ると雪印の中に小さな丸い凸が見て取れる。これは「いじり止め」といわれるもので、さらにさきほどのレンチでも開けられない仕様になっている。これを開けるには、レンチの先端に穴の空いた、「いじり止め付きねじ用」のレンチが必要になる。
さて、ねじを全部外してみたのだが・・・あれ?外れませんよ。
どーしても底が外れない・・・。こういう時、よくあるパターンは定格ラベルなどの下に別のねじが隠されているということ。んー、しかし今回はラベルの下にねじは無かった・・・。
全体を見回してもそれらしきねじは見あたらないので、取りあえずちょっと怪しいフタを止めているねじを外してみる。

しかし、これも空振り。ビクともせず。
T-farってフランスだっけ?(MADE IN CHINAだけど(笑))
ドイツ製ならきっともっと合理的な組み立て方をしてあるだろう。
フランス人の設計思想は・・・?おしゃれな外見重視か?なら多少強引でも外にねじなどを見せないようになっているのかも・・・。
なーんて、実は後付けだけど、「ひっかけ」を内側に持ってきていると見て、マイナスドライバを隙間に突っ込んでこじてみる。
ビンゴ!!少しずつ周囲を開くと外れてくれた。専用工具がないと傷が付いりするような「嵌め殺し」構造。

把っ手の部分も一体となって嵌めてあったので、フタのねじもはずしていたのは正解だった。

で、中を見ると、3つあるナットのひとつ(左側)が外れていたのでした。

きちんと嵌め直し、他のナットも増し締めをして修理完了。ナットの緩み止め用の接着剤などもあるのだが、熱を発する部品のため使っていないと思われる。それにしても緩み止めの座金を噛ましていて外れるとは・・・。世界最速、時速574kmのTGVを走らせる国らしくもない、というか。さすがにそれは中国では生産しないか。
ついでに内側にこびりついたカルシウムなどをクエン酸で綺麗にして、無事復旧。さっそく珈琲を入れる。
さてさて、「特殊ねじ」を検索してびっくりの発見。特殊ねじはトルクスねじ以外にもいろいろな種類があるのは知っていたが、自分の知識以上にたくさんの種類があった。
特殊ねじのオンラインショップまであったのには驚いた(笑)。
その名も『
ネジコム』・・・って、おいっ!!
で、ここの「いたずら防止ねじ」のコーナーにある、
「ワンサイドなべ小ねじ」、これには参った。
写真をコピーしたいところだが、大きめの絵を描いてみた。

分かりますか?マイナスのねじの頭の部分が半分ずつS字状になだらかに削られているのである。
つまりこのねじの場合、普通のマイナスドライバーでは締めることは出来ても、反対回りでは、壁がないからつるりと滑ってしまう。外すことは出来ないのだ!!ゆえに「ワンサイド」。(外すためには専用工具が必要というわけ。)
この発想はなかったなあ。こんな小さなパーツなのに、まさにデザインに何ができるかを端的に物語っているようだ。
非常に助かりました!ありがとうございました!