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妄想初夢 秘密結社『全国海苔干瓢組合』の野望

 
 お気づきでしょうか?年を追うごとに季節のイベントが早くなっていることに。昨今ではクリスマスが終わった途端、コンビニの店頭に「恵方巻ご予約」の登りが並びます。しかし今年は僅かな変化がありました。それはポスターなどの「恵方」の文字の前に「本」という漢字が追加されていた事。『本恵方』? いったいどれだけの消費者がこのことに気付いているでしょう。しかし、各スーパーやコンビニなどの上層部には既に極秘で通達が行われていたのです。ついに恵方行事総元締めのあの組織が満を持して動き出したのです。そう、日本のフリーメイソンとも噂される『全国海苔干瓢組合』です。


『全国海苔干瓢組合』 最高執務室にて。

「第一執務官殿、この度はご就任おめでとうございます。」

(一同)「おめでとうございます。」

「ありがとう。第一執務官就任よりもうれしいことは、とうとう例の計画を実行する日がやってきたということです。諸君、長い間よくぞ堪えてくれました。」

「おお、勿体ないお言葉!我ら雌伏すること十有余年、この日が本当に訪れようとは!ううっ(泣く)。」(一同すすり泣き)

「『クワドロ計画』!ついにこの日が…」


『本恵方』

「諸君、我らの先達が考案した、節分の恵方巻、この仕掛けは確かに大当りでした…しかし、節分とは四立、すなわち立春、立夏、立秋、立冬の前日、我々はこれまで残り3回の機会をむざむざと手をこまねいて見逃してきたのです。」

「あな口惜しや!歴代執務官の弱腰がこの自体を看過してきたのだ!」

「諸君!!時は来たれり。今こそ捲土重来を果たすのです!」

「して、仕儀やいかに?」

「まずは現状の節分、正しくは前日の2月2日ですが、単なる『恵方』から『本恵方』と呼称を変えます。ラッキーフードはこれまで通り『太巻き』といたします。」

「うむ。ここがこれまで通りなら組合員も安心するでしょうからな。」


『裏恵方』

「次に対称位置にある立秋、この前日の節分を『裏恵方』と呼ぶことにします。」

「おお、裏恵方!」

「方位学的にも裏を押さえてこそ悪運の侵入を防ぐことができるというもの。」

「で、ラッキーフードは?」

「これがなかなかに難しい。立秋とは言え、8月7日では寿司のような生ものは扱い難いですからな。」

「夏バテ予防に鰻といきたいところだが。鰻を海苔で巻いてから『鰻巻き』にすれば万事解決するのにのう。」

「そう、そうすると7月20日と8月1日の『丑の日』とだだ被りとなってしまう!平賀源内のやつめ!」

「案ずることはありません、既にこの問題は解決して、各流通業者にも開発を打診してあります。」

「ほう、その答えは?」

「その答えは豪華『かき揚げ丼』です!」

「なるほど、その手があったか!それならオクラ、苦瓜、冬瓜など夏秋の野菜に、ほぼ寿司ネタの海老やホタテ、イカなど、あらゆる食材が使える。しかも火を通す安心感もある。ほぼ同じ素材で作られた料理であっても、巻き寿司とかき揚げでは全く印象が違いますな。」

「穴子や鰻、海老など高級食材を使った特別のかき揚げ、予約で活気付く食品売り場が見えるようですな!」

「おい、肝心の海苔の天ぷらも忘れるでないぞ。」(一同笑い)

「大きな丸い海苔天で蓋をするという案を提案しているところです。『福海苔』と称して。あるいはかき揚げに海苔を大量に散らす。名付けて『恵方揚げ』。如何でしょう?」

「(一同)お見事!」

「どうされました、上級干瓢責任者どの?表情が冴えませんが。」

「あ、いえ、干瓢の出番はありましょうや?」

「もちろん、忘れてはおりませんよ。刻んだ干瓢をかき揚げに混ぜる提案をしております。これがなかなか良い歯触りとなりますな。海苔と干瓢は必須という事で話を進めています。」

「これはこれは。ありがとうございます。安心致しました。」


『追恵方』

「さて、では、立夏は?ここはもっと難しいのでは?なんせ、5月5日、こどもの日ですからなあ。」

「諸君は端午の節句に何を召し上がられますかな?」

「ええと、柏餅でしたかな。」

「私の家ではちまきでしたなぁ。」

「そう、いわばそれらは菓子の類い。こどもの日には特定の食材が紐付けられている訳ではないのですよ。しかも立夏の前日といえば、5月4日の『みどりの日』、2007年より祝日法の改正で設けられた祝日には名前とは裏腹ににまだこれといった色がついていないと言えましょうな。」

「なるほど、今のうちに我らで印象的なイメージを付与しようというわけですな。」

「そう、毎年指をくわえてハロウィンを横目で見る口惜しさと言ったら(泣く)」

「ラッキーフードは何なのです?さぞや妙案がお有りなんでしょうなあ。お聞かせください。」

「お待ちください。ここは焦ってはいけません。まずは名前ですが、この立夏前日の節分は『追恵方』とするのが良いでしょう。福を呼び込むのに念を押すという感じでしょうか。」

「おお、なるほど、追恵方!」

「しかしながら、しかしながらですよ、ここは焦って高価なご馳走のイメージを定着させようとするのは得策とは言えません。何処様もこどもの日絡みで何かと出費も多いことでしょう。あまりに『恵方』を強調し過ぎて、消費者に高価な食品を押し付けようとしては警戒されます。いや、そもそもクワドロ計画はわざとらしさの4倍仕掛けですからな(笑)ごく自然に、例え気付いたとしても、美味しいものが食べられるなら業界の仕掛けに乗ってやろうじゃないか、と、そう思っていただかねばなりません。」

「そのようなラッキーフードがありましょうか?例えあっても反感を買わないような廉価な値付けならそもそも業界に利益も出ないでしょうし…」

「それがうってつけのアイテムがあるのですよ。」

「それは?」

「『お結び』です。」

(一同)「お結び?」

「さよう。もちろん、普通のお結びではありません。まず、海苔ですが、『みどりの日』にちなみ、青海苔をまぜ、炙り加工で緑色の発色を強く出します。既に絶妙な加減で海苔を炙れる遠赤外線海苔焼き機を開発してあります。もちろん具にはそれ相応の工夫が必要でしょう。いわゆる『天むす』のような見せ方も必要でしょうな。
つまり、普段から陳列棚に並んでいるものより僅かに高級かつ増量した具により、お結びのアップグレードを目指すのです。もちろん、予約も不要。」

「しかし、それで差別化できるものでしょうか?しかもたった一日だけでは…」

「秘策があります。我々はあの『珠こがね』生産者と契約を締結し、全量買い取りを可能としました。」

「『珠こがね』!あの全国品評会でもっともお結びに適していると満場一致で評価された新開発の米?!しかし、あれはまだ生産量が充分ではなかった筈?」

「そこは抜かりありません。我々は5年前から計画的に生産者を増やしてきたのです。つまりたった1日だけ『珠こがね』を用いた限定お結びが食べられるのです。
 いいですか、現在、コンビニの棚に並んでいるお結びは例え『天むす』といえど135円位のもの。定番品は120、130円の値付けなのです。それに比べてサンドイッチは高級化路線が功を奏し、今や300円前後がボリュームゾーンとなっています。お結びがいつまでも安価な100円そこそこの値付けに甘んじていて良い訳がありません。各メーカーとも今は辛うじて国産海苔を使用していただいてますが、正直これでは我々も苦しい。つまり、この『恵方結び』を機にゆくゆくはお結び全体の底上げを図る、それこそが真の眼目なのです。まずは200円台後半の値付けを目指します。」

「『恵方結び』というのですな。縁結びにも通ずる縁起の良い名前ですな。いや色々な演出ができそうです。それにしても我ら海苔業者の行く末まで見据えたご慧眼、感服致しました。」


『締め恵方』

「ありがとうございます。最後は11月7日の立冬ですが、これには特に深い工夫は必要ありません。」

「え、そうなのですか?」

「この日は、『締め恵方』と名付けました。一年の計を締め、無病息災に感謝し、一年の厄払いを行うのです。」

「では、ラッキーフードは…」

「さよう、ラッキーフードはずばり『散らし寿司』、つまり『恵方散らし』、「厄を散らす」に掛けてあります。お判りでしょう、これについては巻き寿司にするか、しないかだけで中身は同じなのです。つまり2回続けて同じ食材を調達する事になるので、コストメリットや調達計画など色々有利に働くことは申すまでもありません。ハロウィンのお子様イベントの菓子に飽きたところで、大人向けの散らし寿司を提供すれば、高年齢層に受けることは間違いありません。2月にも巻き寿司という同じネタなのですが、なに、この後、クリスマスにお正月と立て続けにイベントがあるので消費者は考えるいとまもありません。以上が『クワドロ計画』の詳細です。」

(一同)「ブラボー!」



「皆さまお疲れ様でした。では、最後に時期総会に備え、『エイトフォールド計画』のレジュメをお渡ししておきます。極秘事項であることはもちろんご承知の通りです。お取り扱いにご注意願います。

 さて、本計画は『四立』に『二至二分』を加え、1年の『八節』において当組合が高付加価値食材を投入していくため、いかにイベントを仕掛けるかという課題を重点的に検討したもので…」



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