2年半続いた金曜夜のバラエティー番組、「ニューデザインパラダイス」が先週で終了した。
身の回りのいろいろなものを「リデザイン」するというコンセプトがなかなか面白く、ファンも多かったようである。時には書道家など、他ジャンルの人にデザインを依頼したりとユニークな視点もあり、楽しみにしていたので残念である。
素人や芸能人にデザインさせるというのであれば笑っていればいいだけだが、1流どころのデザイナーが登場するので見る方としてもつい評価が厳しくなってしまう。とても感心させられるものもあれば、薄っぺらい作品もあったりで受けるデザイナーとしてもリスキーだったかもしれない。
で、10月1日(日)まで日産本社ギャラリーでやっている「ニューデザインパラダイス作品展 第2弾」に行ってきた。
実際、作品を目の当たりにすると、非常によくモデルを作りこんであるものと、手を抜いてあるものがあって、テレビの画面には写らない差異が如実に分かったりもする。
さて、個人的に気に入ったものとダメダメ作品を少しずつ挙げてみる。
「レジ袋」by デザインバーコード

今すぐにでも可能なデザイン。
手からお猿さんやカエルがぶらさがっていたらそれはそれで楽しいではないか、とニンマリしてしまう。彼らの仕事同様、さりげないデザインの遊びごころに好感の持てる作品。
裏返せばバナナになるというのはやりすぎとしても、他にもいろいろと展開が可能だろうし。印刷のコストはかかるが、無料で手に入るレジ袋が見直されつつある昨今、1枚10円とかのコストを課す代わりに、印刷色を増やして楽しいグラフィックを付けるというのは正しいアプローチであると思う。そうすれば再利用する人も増え、結果的に無駄なレジ袋の消費を抑えられるのではないだろうか。
グラフィックのみでなく袋の機能面からのアプローチもあれば良かったが、レジ袋はコストの面からほぼ極限まで検討されつくされている製品なので、そちらはかなり困難かと思う。たしかにまずはグラフィックから攻めるのが「プロダクトデザイン」としても正攻法と思える。
「ランドセル」by 佐藤卓

笛を入れるところ、ノートや教科書を入れるところ、小物を入れるところ・・・といくつかの形や大きさごとにパーツを着脱して好きな形のランドセルを組み立てられるというコンセプト。
この番組としては珍しく、ほとんど機能面中心で造られた作品である。デザイナーの佐藤氏はグラフィック畑の人なので驚きだ。
たまにはこういうID寄りの作品を紹介してもらわないと見ているプロダクトデザイナーもストレスが溜まるというもの。
とにかく「着脱機能」は個人的にもツボなのでランドセルと言わず、普通に商品としてもありだと思う。
「マッチ」by ロス・ミクブライド

今回の展覧会の中でも1、2を争うほど完成度が高い作品ではないだろうか。
誰が見ても説明不要、マッチのリデザインとして現行のものと全く異なるアプローチで、オーナメントとしての要素を与えられ、明日、商品化されたとしてもおかしくない。ここでは折った軸が手前に置かれているが、実際は木の下の部分に小石が満たされていて燃えかすを置くようになっている。
たいていの場合はライターがあればマッチの出番はないわけだが、このマッチならぴったりと嵌るシチュエーションもまた多いことだろう。
デザイナーのセンスに脱帽。
さて1流のデザイナーの作品にダメ出しするなどおこがましいのだが、これはないんじゃないの?という作品を。
「レインコート」by 帆足英里子

いやね、商品としてはありだろうと思うのですが・・・しかし、番組で説明していたコンセプトに問題あり。つまり例えばスタジアムでサッカー観戦などをしていて急に雨が降ってきたときに誰でもロールから千切って使える使い捨てのレインコートだそうです。ロールからまず四角い部分を切り出して、さらにそこから不要な部分を取り去るとレインコートの形になる・・・ここでもう、かなりの部分を捨てているわけですね。
しかも作者は「無料」というコンセプトを強く押していて、スポンサーロゴなどをつければ可能では、というような内容だったと思うのだが・・・。コストの問題もさりながら、「タダ」ならいいってものではないでしょう。無料であればそれだけ誰もが気軽に捨てるわけだから。
今や、雨の日の無料の傘袋でさえ、遣い捨てるのに罪悪感が伴うご時世なのに。
とにかくデザイナーのかなり能天気な発言に驚かされた一品。
「レジャーシート」by 佐藤一郎

ピクニックなどで使うレジャーシートを「帰りがけに畳むのが面倒だからそのまま放置してくる」という、もう何を考えているのか分からない作品。さすがにこの回はスポンサーの「日産」が何も言わないのだろうかと疑問に思ったほどである(笑)。
ご丁寧にシートには草花の種が仕込まれていて、やがて残した野原に緑が溢れるそうな。今時、そこら辺に無計画に種を蒔けばエコロジーどころか環境アセス的にも問題ありありだろう。植物の種=環境に優しい、などほとんど小学生レベルの発想。しかも素材は麻袋だかジュートだかのリサイクルのようでこれはなかなか自然に還らないと思うのだが・・・。いいのか?そんなんで。
「ガードレール」by 隈 研吾

無機質なガードレールが植物で埋まっていれば・・・という、これまた分かりやすい発想の作品。
一応、スチールで箱のようなものを組み、土と植物を入れるらしい。そりゃ、見た目は楽しいでしょう。で、延々と続くガードレールの中を虫が移動するそうです。虫への暖かい心遣いも忘れないのはさすが(笑)。
雨水が溜まったり、泥が流出したり、ゴミを入れられたり、花が枯れたりで、管理が大変でしょうな。でも道路行政的には天下り先の仕事が増えてありがたいというところでしょうか。すみません、そのために税金を払いたくないんですけど・・・。
最近、工事現場などでやたらと植物のペイントをしていたり、中には造花まで飾ってあるところがあるが、なんかねー、お為ごかしというか・・・安易というか・・・。
1本火をつけたら全部に火をつけたい衝動にかられます。