ツリーハウスで遊ぶ
ポーラ・ヘンダーソン/アダム・モーメント著 二見書房 2006年

世界中の人々に愛される「ツリーハウス」の魅力を過去、現在、未来の順で、豊富な写真とともに紹介した本。
二人の著者のツリーハウスへの愛情がたっぷりと込められており、そのたくさんの写真を見ているだけでも幸せな気分になれる。
ツリーハウスは見た目の優雅さとは裏腹に、実際に住み、維持していくのは並大抵ではないことは想像に難くない。飲み水の確保や下水道の処理から、虫や蛇などとの共存生活、そして家をささえる「樹」(ホストツリー)の健康維持管理まで、まず、いい加減な心構えでは無理だろう。
なので、この本のツリーハウスの歴史を概観してみると、そこに住む人々は、大きく二つの系譜に分かれるようだ。
一つは、実際に樹上生活をしている少数部族、森林伐採などに反対する拠点としてツリーハウスに住む活動家(2年間、高さ60mのツリーハウスから降りずに頑張った自然保護活動家、森のジャンヌ・ダルクことジュリア“バタフライ”ヒル女史が紹介されている)や、自然愛好家など、筋金入りの「エコロジスト」「ネイチャーラバー」の系譜。つまり、樹上に住む苦労などもろともしない人々たちである。
もう一方は、そういう苦労を他の人に任せられる、いわば上流階級の人たちである。この本でははるかローマ時代から、特権階級の人々が現実のあれやこれやから逃れる憩いの場としてツリーハウスを愛してきた歴史が語られている。英国王室にその伝統があることや、世界中のセレブ御用達のツリーハウスリゾートが紹介されている。
(ま、私などそのどちらでもないので、当然、ツリーハウスに住むなど無理ってこった。)
その他、未来へ向けてのデザイナーたちによる「国際ツリーハウス・コンテスト」の記事も興味深い。
まあ、誰しもが「トム・ソーヤ」を読み、「秘密基地」にときめき、一度はツリーハウスに住んでみたいと憧れるだろう。現代人にとっては一戸建てを手に入れるよりも難しい夢かもしれない。やはり、自然に対しての責任を考えれば、興味本位の中途半端な気分では適いそうにない。
この本では取りたてて、エコだ、自然保護だ、などと声高には叫んでいない。ただ、世界中の何十もの美しいツリーハウスを紹介するだけで、なんとも自然に対する愛情溢れる眼差しが伝わってくるのである。
日本ツリーハウス協会
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