「真夏のオリオン」
映画界では俗に「潜水艦ものにはずれなし」などという。逃げ場のない文字通り息詰まるような舞台設定は、それだけで物語に緊張感を与えるからだ。
「真夏のオリオン」は全体的にやや説明的にすぎるきらいはあるが、シナリオはなかなかよくできていると思った。監修・脚色に「福井晴敏」氏が参加しているので、『ローレライ』のようなとんでも設定だったらどーしよう、と心配したが、今回は堂々と直球勝負で構想がよく練られていると思う。
プレスリリースには往年の名作『眼下の敵』をリスペクトしている旨が記載されているが、駆逐艦「パーシバル」側の描き方あたりにかなりその影響がありそう。(といってもよく覚えていないので久しぶりに『眼下の敵』を見てみたくなった。)
主演の玉木宏は冷静でひょうひょうとしたキャラクターを演じている。役者さんはどうやら全員が体重管理をしたように伺えるが、玉木君のやせ方はちょっと引いてしまうほど(笑)。
げっそり(笑)残念なのは「絵作りが軽い」こと。コスト的に仕方ないとは思うが、潜水艦も駆逐艦もセット、あるいは部分ロケで、大海原での躍動感にまるで欠ける。潜水艦の艦橋での背景合成など、昔の東宝映画あたりへのオマージュ(つまりブルーバック)かと思ったぐらい(笑)。
一番の見せ場である潜水艦の中も、全体的にデザインはよく出来ているのだが、重厚感に欠ける。息苦しさや鉄やオイル、汗の臭いなどが画面から伝わってこないのだ。『眼下の敵』だけでなくウォルフガング・ペーターゼンの『Uボート』もリスペクトすべきであった。
また、フルセットとはいわない、CGでもいいから架空の潜水艦「イー77」の外観をもっとちゃんと見せるべきだろう。
お話はいいので、ロードショー前からなんだが、海外資本でリメイクしてほしい・・・。
「真夏のオリオン」公式サイト「PIT-ROAD」(艦船模型メーカー・「真夏のオリオン」関連製品ページ有り)
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