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若冲―おそろしい子!

以前より気になっていた若冲を「皇室の名宝展」へ見に行ってきました。頑張って土曜日の開館前に着いたのですが、逆に50分ほども待つはめに(涙)。中も凄い混みようでした。

お目当ての若冲は「動植綵絵」30幅が一堂に会していました。初めて実物を観たのですが、とにかくデータ量が多すぎて消化しきれるものではありませんでした。あまりにも細密な描写なので、一枚に1時間かけて観ても飽きないような作品群でした。とにかく頑張って観に行った価値は十分すぎるほどにありました。

実際はガラスケースの中に1mほども離れて展示されているので細かい部分を観るにはガラス際に並ぶしかありません。これがもう、満員で暑いし、人が動かないし。インフルエンザの人がいたら一発で感染ろうってものです。しかし、ガラスから離れると人の波で上部しか見えないし・・・。(せめてあと5,60cm高く展示すれば混雑も緩和できたはず。東博の学芸員はもっと検討すべきでしょう。)


美術鑑賞に慣れている人たちは小型の単眼鏡などを持ってきていました。いわゆる「ミュージアムスコープ」と言われるものです。(調べてみるといろいろあって明るさや最短合焦距離など様々。ネットではいろいろと販売されているようですが、こればかりは実物を実際に見て選んだ方がいいようです。)もう、なんか、ほんとに人様が覗いているのを奪い取りたい衝動に駆られました(笑)。



さて、若冲について詳しく知っているわけではないのですが、付け焼き刃でネット上の情報を調べたところ、特別な師も弟子もいないとのこと。近世に再評価されるまでは、一部の好事家を除いては日本美術史上では傍流として扱われていたようです。

しかしながら、実物を目の当たりにして感得したのは、あまりの突出した才能に世間が評価できなっかったであろうということです。つまり狩野派、何々派というようにある種の流儀の修練によって得た画境ではなく、突然変異のように現れた、まさに天才だったということ。

描かれた対象の細部の描写の細かさたるや、実物をよく見たというどころではなく、捕まえて虫眼鏡で観察しなければ得られないような情報のレベルなのです。カメラもない時代にどうやって記録したのでしょうか。ひとつひとつの細部を帳面に記録していったのはもちろんでしょうけれど、もしかしたら「写真的記憶力」の持ち主だったのかもしれません。

しかも単なる細部描写のリアリズムに徹した画家というわけではありません。むしろ私が驚いたのは絶妙なるその画面構成です。画面全体の色やバランスが破綻することなく構成されています。そのために独自の様式を生み出しているようで、描かれている生物の中には明らかに真実の形とは違うものもあります。(例えばカブトムシや蝶など)

その最も極端な例が「旭日鳳凰図」でしょう。そう「鳳凰」なんて想像上の鳥ですよね。ところが若冲は見てきたかのように細部まで描写するのです。細部まで観察した様々な情報を自分の美意識で再構成する。まさに若冲さんの真骨頂。


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「ねえ、知ってる?鳳凰の羽根の模様はハートマークなんだよ。」by豆柴




また「動植綵絵」は全てが細密描写というわけではありません。例えば「群魚図」あたりはかなり控えめな筆致。蛸の足先に小蛸がしがみついているところなど、茶目っ気もあって「群鶏図 」などの緊張感とは対局の趣きがあります。鑑賞する方も情報量の高い絵を見てきて、最後の方でふっと弛緩され、一息つけるような案配。

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この他、若冲に関しては現在、滋賀県のMIHO MUSEUMにて「若冲ワンダーランド」が開催中です。なかなか見に行けるものではありませんが、展覧会の図録が都内では唯一ここ東京国立博物館地下のミュージアムショップにて取り扱われています。私も購入しましたが、文字通り飛ぶように売れていました。表紙はいわゆる「エロ目の象さん」(笑)。

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「皇室の名宝展」で若冲以外の目玉は「唐獅子図屏風」でしょうか。


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狩野永徳筆による右隻はあまりにも有名。目の当たりにすると屏風の大きさやその筆致の勢いに圧倒されます。私は獅子の毛の表現にゴッホの「星月夜」を思い浮かべました。同じような感想を抱く人は少なくないようです。
ゴッホはジャポニズムに傾倒していたわけで、当時ヨーロッパでは日本美術の紹介も盛んだったようなので、もしかしたら写真などを見ていたかもしれません。

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今回、この有名な右隻以外に対となる左隻が展示されています。こちらは後に「狩野常信」によって描かれたもので、その存在を知らない人も多いのではないでしょうか。ネットで調べてもほとんど画像がヒットしません。永徳の激しい筆致に比べ、落ち着いた筆運びの獅子となっています。運筆は穏やかで激しさよりも様式の美を優先したように思います。




その他、個人的にツボだったのは酒井抱一の「花鳥十二ヶ月図」です。

たおやかで迷いのない運筆、間を活かした空間構成・・・まさに達人のそれです。若冲さんでオーバーフローした目に染み渡るようでした。









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