『マンガ脳の鍛えかた』集英社

「週刊少年ジャンプ」の人気マンガ家37名へのインタビュー集。
小さな文字組でびっしりと濃厚な記事内容。しかしながらマンガ制作の現場写真などがカラーで豊富に掲載されているため決して読みにくくはない。
今、NHKの連続ドラマ「ゲゲゲの女房」がヒットして、昔のマンガ家の赤貧洗うかごとき生活にもあらためて光が当たっている。さすがに昨今ではミカン箱の上で掲載されないマンガを描くマンガ家の姿よりも、単行本がどれだけ売れて、アニメ化されて版権料がどれだけ入ってというような、羽振りの良い話の方が耳障りがいいようだ。
しかし、もちろんそんな例はごく一部も一部。あるマンガ家はジャンプで描き続けることを、メジャーリーグでレギュラーになるよりきついんじゃないか、とつぶやく。
実際、この本を読むと、ジャンプという最前線の舞台でレギュラーを張る作家たちが、どれほど身を削るような創作活動を行っているかということの一端が垣間見られる。
ある意味、これからマンガ家デビューを目指すものにとっては参考になるどころか、縮み上がるような内容かもしれない。
マンガ家がデジタルと手描きをどのように使い分けているかといったテクニック的な話や、創作手法のヒントもあるし、めったに見られない仕事の現場や道具の写真が貴重。マンガ好きやクリエイターにとってはなかなか楽しめる一冊。
個人的には「鳥山明」の、マンガというものについて少し突き放したような雰囲気のインタビューが印象に残った。頂点を極めて辞めてしまった人の言葉というか・・・。
ペン入れで滑らかに線を引くコツを聞かれて鳥山明はこのように答えている。
「コツというよりスベスベの紙を使えばスムーズな線が描けることを、ほとんどマンガを描かなくなった最近になって発見!これまで使っていた紙は質が悪かったようでちょっとショック。」
これを読んだときに中島敦の「名人伝」を思い出した。星さえもその矢で落とすほどの天下一の弓の名人になった男が、晩年、壁にかけられていた弓を見て、これ何?って尋ねるのである。なんか、も~、鳥山明ってば・・・「スーパーサイヤ人」に変身もしないで頂点を極めたって感じ。
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- 2010-08-07
- 本
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