『おもちゃクリエータになるには』ぺりかん社

ぺりかん社から出ている職業ガイド「なるにはBOOKS」のひとつ。「ナルニア国」とは関係ない。
2005年の出版ではあるが、全体的にそれよりやや古い時分の記述が中心となっているのが残念なところ。今、この本を作り直せばもっとデジタルでの商品開発部分に触れることになるだろう。
「なるには」というタイトルではあるが、もちろん、おもちゃクリエータになるための業界標準のハウツーがあるわけではない。この本はまあ、業界の内部のお仕事を紹介する案内本なわけだけれど、編著者が「トイジャーナル編集局」という業界紙なだけあって、それなりにきちんとしたインタビューなども押さえ、よくおもちゃ業界の雰囲気を伝えていると思う。
おもちゃは「製品」というレベルから見ると、基本的にはプラスチック製品が多いけれど、紙でも金属でも布でも、はたまた食品でさえ素材となったりして、その様態は実に多岐に渡る。つまりそれだけ物作りのノウハウも複雑となるので、事前にこういう勉強をしておけばいいということはなく、仕事を通しての経験が重要になってくる。それはこれこれこういう製品=物を売っているというわけではなく、結果的には「エンターテイメント」を売っていると言えるからだ。
物作りの世界のたいへんさは他業種と同じく変わらないだろう。クリエータはそれ以外に常に「お客さまをいかに楽しませるか」という意識が中心になければならない。それって実は想像以上にたいへんだったりする。つまりどんな業界であれ、自分自身が仕事を楽しめるかどうかはとても大切なことだけど、それ以前にお客様が楽しいかどうかがテーマとなるからだ。だって、あなた、毎日毎日、他人を楽しませるようなアイデアを継続して考え続けられます?
この業界でよく言われるのは俗に「千3つ」という言葉。つまり1000個アイデアを考えて、3つ製品化されればよい、ということ。開発部の倉庫には製品化まで至らなかった試作品が死屍累々と積まれているのだ。
これってお笑いの芸人さんに通じるところがあるのかなあ。つまりお客さんを笑わせようとしていろいろネタを考え、練習したりするうちに自分たちでは本当にそれが面白いのかどうか分からなくなってしまったり・・・たとえギャグが当たったとしてもすぐに忘れ去られたり・・・
実際、おもちゃでも、最初爆発的にヒットしても次の年からは見向きもされなくなるような商品は山とある。じっくりと息長く定番化するような商品を育てるのは本当に大変だろう。
この本のサブタイトルには「遊び心と夢を込めみんなの笑顔の仕掛人」とある。おもちゃというと枕詞のように「夢」とかいう言葉が出てくるけれど、おもちゃクリエータとはその舞台の裏方さんなわけで、それって泣きたくなることも多いと思うのだよ。結局それでも笑いながら「楽しさ」ををずっと追いかけていけるようなポジティヴさが一番の適正条件ってことなんだろう。
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- 2010-08-08
- 本
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