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本:『究極の文房具カタログ』

高畑正幸氏が最近上梓された『究極の文房具ハック――身近な道具とデジタルツールで仕事力を上げる』を読もうと思ったのだが、その前に前著の『究極の文房具カタログ』を読むことにした。

高畑氏は、TVチャンピオン「全国文房具通選手権」で3度優勝したことで「文具王」と呼ばれるようになった人物。現在も文具メーカーのサンスターで文房具の開発に携わっておられる。


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さて、この本では見開きを基本として、氏自らの手書きのイラストに文章での説明が添えられている。絵もたいへん上手なのだが、やはり文章がうまい。ボールペン1本、消しゴム1個に対してこれだけ蘊蓄を語れる人はそうそうはいないだろう。もともと1999年に自費出版したものを底本にしているというからオソレイリマシタとしか言いようがない。

氏は設計や意匠畑の人で、私ともフィールドが重なるところがあり、取り上げているものや視点がよく似ていて親近感を持った。特に最後の方で紙を折るための「竹筒」を取り上げているのを見て、ありゃま、それ、ちょっと前にブログで書いたよ、と驚いた次第。


「紙を折る道具」



本書の中で氏は「文字を書く道具の話」という項で次のようなことを説明している。

「えらい」

毛筆

万年筆

ボールペン

シャープペンシル

ワープロ

ケータイメール
「えらくない」


この話は先日行われた「超整理手帳」のオフ会にゲストとして参加されたときにも述べておられた。
要するに、同じ内容を伝えても、デジタルでのテキストと筆などの手書きでは行間にこもる非言語的な情報量に違いがあり、情報量が多いほど「ありがたみ」があろう、というようなことである。


実は私もこのことについては以前から『表現のレイヤー』というテーマで考察してきた。

きっかけは、自分の仕事での体験。かつてまだ駆け出しのころ、ソニーの老技術者さんと一緒にお仕事をする機会があった。老練のその技術者さんが書く手書きの図面は実に美しかった。まだCADが一般的でない時分の話。そこに書き込まれた数字の一つ一つ、矢印の一つがいかにも手練れた風合いで、私を魅了した。それこそ額に入れて飾っておきたいくらいだった。これはおそらく手書きの図面を書いたことがある人にしか分からない感覚かもしれない。(マニアの人なら古い零戦や戦艦の手書き図面に魅了される感覚と言えば少しは伝わるだろうか。)

ところが、である。その老技術者さんの図面で部品を作ると、これがうまくいかない(笑)。どこかに必ず不具合が出る。それを修正するのに苦労したものだ。つまり、いかに図面(の表現方法)が美しかろうと、その図面が表現する終着点である実際の部品が正しいものでなければ意味がないではないか、ということだ。

達筆な小説家の書く作品が必ずしもおもしろいとは限らない、と言ってしまえば、まあ、当たり前と言えば当たり前のことなのだが・・・

『表現のレイヤー』では、4つのレイヤーについて考察してみた。これについては長くなるので日を改めるとしよう。

さて、最後に文具王のイラストの描き方について想像を交えて。

テレビなどで氏の仕事風景を拝見すると、ご自身はいわゆるプロダクトデザイナーが描くようなマーカースケッチもこなされているようだ。
この本に載っているイラストは、印刷上、白黒のはっきりした線で描く必要があったために描かれたということだ。マーカースケッチとは違って、1本1本の線をきっちりと引いている。

私が見る限り、デジカメの画像は参考程度にしか使っていないと思う。基本的に鉛筆あるいはシャープペンで「ブツ」を見ながら下書きをしている。このときには定規もつかってしっかりとパースを決めている。その後、トレーシングペーパーを乗せて上から氏愛用のマルチライナーSPでペン入れ。このときに定規を使わずフリーハンドの味を加味している。

氏によれば描くスピードは速いそうだが、これだけの量を描くのはたいへんだなあ、と感心しましたです。








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2件のコメント

[C550]

以前掲載されていたIQライトの型紙はもう見れないのですが、もう掲載されないのでしょうか?
自作したいとおもっていますがファイルが見れないようなので
  • 2010-11-06
  • CARLHYDE0419
  • URL
  • 編集

[C551] Re: タイトルなし

失礼いたしました!
以前、ホームページのデータを飛ばしたときにリンクが切れてしまったようです。
リンクを繋ぎ直しましたのでよろしくお願い致します。
  • 2010-11-06
  • horirium
  • URL
  • 編集

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