展覧会をはしごしたのでレポート。
「包む―日本の伝統パッケージ」展 目黒区美術館
この展覧会は、目黒区美術館が 1988年に、岡秀行氏((1905-1995)戦前よりグラフィック・デザイナーとして活躍)より譲り受けた 「日本の伝統パッケージ <包む>コレ クション」を紹介するもの、とのこと。
食料品を中心に、木や竹、藁などという素材で包まれた、日本の知恵とでもいうべきパッケージを見ることができる。
ただ、品物をそのまま展示してあるだけ、という工夫の無さが残念だった。触ることも写真を撮ることも禁止。
詳細な説明パネルもない。
入り口で本展のカタログやら日本の伝統的なパッケージを集めた本を売っていたが、これでは本を眺めているのと大した違いはない。
大切な昔からの資料に触れられないのは当然としても、展示物はかなり現代のものが多いように(代用している?)見受けられた。
例えば、私の好きな新潟の特産品に米を蒸しただけの素朴な「ちまき」がある。会場にもいろいろな形態のちまき(の写真)があった。

これは大きな笹の葉で餅米を三角に巻いてあるのだが、それがいかに見事に巻いてあるか、外から見ただけでは分からない。
笹や藁で作られたパッケージは、包むものと包まれるものの素材の特性が一致し、そこに長年の工夫が施されて完成した形態だ。
そのような手業(てわざ)の有り様は外見だけからは決して感得しえない。実際に素材に触れ、ほどき、組み立てたりすることによって初めて先人の知恵の一端に触れることが出来る。
会場に藁や和紙などの素材を用意し、触れるようにすることはそんなに難しいことなのだろうか…。
せめて、職人が組み上げる過程の写真ぐらいは用意してあってもよかった。
(単日のワークショップは開催されるようだが、参加費3000円の材料費1000円って、そりゃ何だよ!)
単に展示してあるだけではなく、伝統パッケージの本質を伝える工夫を凝らさねば、譲られた岡氏も残念なことだろう。
「箱 “しまう・はこぶ・おくる”」 世田谷文化情報センター 生活工房
世田谷区役所の出張所に隣接した小さなギャラリースペースに、パッケージ関係のなんともまとまりのつかない展示が並べられていた。
私のようにどんな箱でも箱に触っているだけで嬉しい人間にとっては興味深い展示ではあった。個人的には作家さんの作品は刺さらなかったが、いくつか工業製品の専門的な知見が得られ満足。
例えば、同じ内寸で作られた箱でも、箱の作り方で「ステッチ型」「L字ステッチ型」「貼り箱」とあり、それぞれで蓋を閉めたときのゆるさが違うとか…
こういうものにも触れて嬉しい。
「ノンステープル段ボール」

底の部分。ステープル(針)もテープもない。

中はというと…

こだわり「惚レタス」の箱に惚れたす。こういう段ボールを触ってニヤニヤできる珍しい人は行くべし。
それにしても「世田谷文化情報センター」、ワークショップスペースも豊かで贅沢なことよ。さすがにお金持ちの区は違うなあ。
こんな楽しいスペースも!

モンゴルのパオをモチーフにした多目的スペース。ロールカーテンで小屋のようになるのだ。
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