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キャンパスノートの仲間たち 1

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paracuruno(パラクルノ)

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コクヨデザインアワード2002で優秀賞を受賞した木村寿樹氏の作品「ripples note」を商品化したもの。

いきなり話はそれるが、コクヨのデザインアワードは最近のコンペの例に漏れず、入賞作品の権利関係がボッタクリである。応募規定には次のようにある。

『●応募作品が入賞した場合、その応募作品の日本および世界の全ての国の特許、実用新案、意匠、商標、著作権に関する全ての権利は、コクヨ株式会社に帰属するものとします。尚、権利の譲渡対価は、当社規定の入賞賞金をもって充てるものとします。』

つまり、著作権まで譲渡させるという徹底振り。「製品化の優先契約権」なら話は分かるが、これはかなり応募者にとっては不利な条件だ。
例えば、この同じ2002年に佳作に選ばれた神原氏の「カドケシ」は550万個以上も売り上げているが、賞金は(当時の規定が分からないので)今の規定と同じならわずかに10万円ですから(笑)。

まあ、そこまで売れれば業界での氏のネームバリューも上がったかと思うが、一般には氏の名前を知っている人は稀だろうし、コクヨのHPでも氏の名前が露出している部分は僅かで、探すのにも苦労する。
同じく、パラクルノの木村氏の名前も埋没しているわけで、見合った対価といえるかどーかは甚だ疑問である。

(にしても、「佳作」と判断したカドケシがお化け商品になったわけだから、審査した先生方は総入れ替えだな(笑))

また、もう一つ重要なことは、製品化されない入賞作品はずっと塩漬けになってしまうということ。
考案したデザイナーとしては、1,2年で商品化される目処がないのなら、賞金を返還しても権利を返してほしいのではないか、と思うのだが・・・。

さて、パラクルノ、もとい、「ripples note」は木村氏によれば、「表裏関係なく、どんな指の状態でもめくりやすい。」とのこと。まさにユニバーサルデザインとして、指のコントロールが容易でない人でも使いやすいようにとの製作意図で、シンプルながら秀逸なデザインだと思う。

コクヨとしては「ユニバーサルデザイン」を標榜するにまさにうってつけの商品であろう。しかしながら、その価格はA5の小さなノートでも¥525と、ほぼ通常品の3倍もの価格。
ユニバーサルデザインの定義の一つには「一般的な製品やサービスと比較して大幅に高価でないもの。」という項目があるので、本質的にはユニバーサルデザイン、ユニバーサルデザインと声高に叫ぶには手前味噌もすぎるというものだ。

まあ、こういうのを見ると、環境問題と同じで、企業が儲けを度外視して消費者の目線で物作りをしていますよ、という看板が、いかに宣伝文句にすぎないかということが透けて見えてしまう(笑)。

とはいえ、「パラクルノ」を誹謗しているわけではない。
手にとって見ると分かるが、表紙の材質も吟味されているし、斜めの小口のカットは芸術的でさえあり、製作者の苦労がしのばれる。技術サイドとの間で丁丁発止があったと、何かで読んだ。こんなレベルの製品は日本でしか作れないだろう。この技術を発展させたものが「コクヨ100周年記念装丁ノート」である。全体の色使いは好き嫌いもあろうが、小口の斜めカットはとんでもない領域にまで達している(笑)。

つまり、使いやすさに寄与するための、小口を斜めカットしたノートを、高度な技術でもって可能にしているわけだ。徒に、いや、営業戦略的に「ユニバーサル」などと喧伝せず、ただ単にコクヨはそれを誇ればいいと思う。高いですけど、使いやすいです、美しいですと。

ユニバーサルというのなら、考案者の木村氏を蔑ろにしないでほしい。大企業のパワーで著作権をもぎ取ろうとも、ユニバーサルの目線で考案したのは木村氏に他ならないのだから。



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