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図鑑が好きなのだ14 断面図の鬼才

前回の「図鑑が好きなのだ13」の『透視図鑑シリーズ』に引き続いて断面図系の図鑑を紹介する。

今まで紹介した断面系の図鑑を見ると、「図鑑が好きなのだ6」ではモイラ・バターフィールドとリチャード・オー、13ではクリス・オックスレイドとマーク・バーギン他(この絵本の絵は複数のイラストレーターによる)というように二人以上のユニットによって制作されていることが多いようだ。


そして今回紹介する三冊の本はいずれも、スティーブン・ビースティー/絵とリチャード・プラット/文のユニットによって制作されたものであり、この二人はまさに断面図の専門家チームと言えるだろう。いずれも270mmx360mmの大型本である。



『モノづくり断面図鑑 ドーナツから宇宙ロケットまで』 (HOW THINGS ARE MADE) 偕成社 (世界15ヶ国 国際共同出版)


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「ドーナツ」と言っても、ドーナツの断面ではなく、ドーナツが作られる過程が細かく描かれている。

つまりタイトルに「モノづくり」とあるように、単純にある「物」を分解してみせるのではなく、様々な製品がどのようにつくられているか、という製造工程を描いた図鑑なのである。

圧巻は中綴じにある見開きである。

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幅1m以上に渡るサターン5型ロケットだ。

この作家の特徴は一定の俯瞰位置に視点を固定して、同一の縮尺で描き切っていることだ。ほとんど拡大図が無い。これは至難の業で、大きな建築物などを描こうとすると、人物などは表情も分からない蟻のような大きさになってしまう。

従ってもちろん、非常な細密描写となり、目が痛くなるほどだ(笑)
しかし、これは子供には楽しい本だろう。自分がこういうの本を好きだったからよく分かる。飽きもせず眺め、何年にも渡って引っ張り出しては読み返す本なのだ。そして細かい子供だましではない解説も、最初は分からなくても成長とともに、だんだんと分かるようになっていくのだ。





『解剖断面図鑑』(EXPLODED VIEWS OF ASTONISHING THINGS) 偕成社 (世界15ヶ国 国際共同出版)


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こちらは12の場面を俯瞰的に分解図にしたもの。同じく細かいことこの上ないのだが、不思議なユーモアがある。例えば小さな緑色のエイリアンがウォーリーをさがせ!よろしく隠されていたりする。

この本でも見開き表示が一つ挟まれていて、そこでは時間の流れさえ切り取ろうとしている。その表現は実際に見て頂くしかない。

そして、私が衝撃を受けたのは次のページだ。


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とんでもない人体の分解図!こんな風に人体を分解してみせたのは「大友克洋」以来だ。しかもカラーの子供向け図鑑でこれをやってみせるとは…この強烈な図像は一生忘れないだろう。





『輪切り図鑑 クロスセクション 有名な18の建物や乗物の内部を見る』 岩波書店


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この本では俯瞰や同一縮尺という方法に加え、さらに「輪切り」という手法が加えられている。見開きは2ヶ所あり、やはりすばらしいの一言。


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同じ作者によるものなので原画の傾向が異なるということはないと思うのだが、偕成社の本に比べ、岩波書店のものの方が印刷のコントラストがはっきりしており、こういう細かい表現を見るのには見やすかった。


いずれの本も驚くべき作品なのである。これだけのものを正確に表現しようと思うと、まずは資料集めが大変な筈なのだ。自動車や船などという物ならまだ分かるが時代の古いものや、地下鉄の駅や街まで含む表現など、どれくらいの資料に当たったのか想像を絶する。

とにかく誰にでもできる仕事ではないが、日本人にも得意な方はいそうだ。この分野に日本人の作家が出ることを期待する。


追記 121230


さて、いつもいつも「日本でも断面図を」と書いていたからという訳でもないのだけれど、つい最近、小学館より断面図をふんだんに使った図解系の図鑑が発売された。


こども大百科 キッズペディア 「大図解」


ざっと店頭で見た感じでは、深くを掘り下げるという構成ではないようだが、項目も多く、図も丁寧。この手の図鑑は多くないので、理数系・技術系に興味のあるこども達には福音だろう。

ただ、3780円とはまたすごいお値段だ…まあ、それぐらいはするわな…。でも自分でもちょっと手が出せませんがな…。







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